IT活用の進め方(その3)

 前回IT活用の目的をしっかり持つためには問題点を明確にすることが肝要というお話をしました。目的をしっかり持たねば、IT導入が目的になってしまい、導入完了後は知らんふりという、ベンダーさんだけが喜びそうな結果が待っています。

 さて、目的が明確になったとして、次は業務手順の確認についてですが、ここにも大きな壁があります。
 多くの会社では、属人的な業務がはびこっています。ISO9001取得企業ですら、全業務を対象にしているわけではないので、問題を抱えている場合が少なくありません。SOX法導入に伴い見直しをかける企業も増えつつありますが、あくまで上場企業スタートですので、関連企業としての中小企業まではなかなか及ばないでしょう。

 まずは業務のたな卸しです。目的の対象となる業務に絞ってから関連業務を洗い出すことが大切です。そして、例外処理をどこまでシステム化するのか、そもそも今の業務があるべき姿なのかを考え直すことも必要です。

 

システムを開発するにしろ、市販ソフトを導入するにしろ、一般的な業務手順というのが世の中にはありますね。知らず知らずのうちに我が社オリジナルになっ ていた業務手順が、本当によいものなのか見直しておきましょう。そうしないと、無駄な開発費や導入費を計上することにつながります。業界のルールもあるで しょうが、一般企業と自社の違いをよく把握した上で、競争優位になる手順であれば残すべきですが、そうでないものは修正すべきです。IT活用はその重要な きっかけになるでしょう。

 業務につきものの承認も同様です。作成、審査、承認とISO導入企業でしたらご存知でしょうが、通常はこの3つに3人がはんこを押せば終わりのはずです。にもかからず、3個以上のはんこを押している企業が少なくないのはなぜでしょう。それは、業務の役割分担が明確でないからです。もちろん、目を通すべき人が多くいるのかもしれませんが、主要な3人以外には閲覧にすべきです。閲覧と承認を分けるのが、業務の流れをスマートにするひとつのポイントです。あとは、権限委譲です。そうすれば、対象上職者は減りますから、承認の形もわかりやすくなるし、業務の処理速度もあがるでしょう。システムに対する負荷も下がります。

  例外処理も重要です。これ自体、明確でない業務が多いものですが、たとえ明確であっても、例外ばかりが多すぎて通常処理業務のほうが少ないといった話もあ ります。これは明らかに、業務整理の仕方が間違っているのでしょう。例外処理が多い場合とは、えてして業務を大きく捕らえすぎる傾向があります。大きさを 「粒度」と表現しますが、業務粒度を小さくして、複数の業務に分解し、ケースごとに見直せば、少ない組み合わせで対応できるはずです。例外がほんとうに例外でいいのかしっかり見直ししましょう。

 最後に、システム化をする前に、システム化することにより本当に業務が改善できるかをもう一度確認してください。 やみくもにシステム化するのでは、逆に手間や無駄を増やす場合もあります。繰り返しや転記、決まりきった流れの部分のみをシステム化し、それ以外は割り 切ってシステム化からはずすことも大切です。例外処理はシステム化からはずされやすいものですが、改善効果があるのならばきちんと組み込むべきです。無駄 でない投資をすることは簡単ではありませんが、改善の効果をしっかり予測し、目的を達成するための手順を組み込めば、それなりに結果はついてきます。逆 に、ここができなければIT活用は間違いなくうまくいきません。