IT教育運用計画策定

 今回はIT計画策定の第3弾。IT教育運用計画の策定に関してです。

 IT教育運用計画とは、社員への集合教育、OJT、サポート体制の運用を含めた教育運用に関する計画です。教育で知識を与えるだけでなく、試験やアンケートによる状況確認といったフォローも含まれます。

 システムは使われて初めて効果が発揮されるものです。高価なハード、最新のソフトを導入しても、使う側の準備ができていなければ、宝の持ち腐れ。「そんなことは知っているよ」という方が大半でしょうが、世の中にはなぜか「動かないシステム」が少なくありません。

 

  社内システム構築するにあたり、ハード・ソフトは必然的に準備されますが、教育・運用はそうではありません。これはハード、ソフトはベンダーやメーカーが積極的に売り込むのに対して、教育・運用はそうではないからです。また、企業側も、無形の教育や運用にはお金を出したがりません。結果的に、システムがうまく稼動しない原因を作ってしまうのです。わかっているけれどもついつおろそかにしてしまうのが、教育・運用なのです。その点を踏まえて、計画策定のポイントをお話しましょう。

 まず、システム導入に際して従業員に必要な技術を洗い出します
 業務プロセスを明確にし、IT化すべき部分をシステム化するのですが、この際、今までと違った技術が従業員に必要となります。例えば、鉛筆で記入していたのがキー入力に変わったり、紙なら上司に手渡ししていたのがメール等で電子的に送らなくてはなりません。
  当たり前のようなことですが、意外と明確にされていないものです。新旧の業務プロセスの差異をつかんでいれば、このような作業は不要ですが、そこができていない場合が多いようです。

 次に、担当の従業員のIT成熟度(使いこなす技術)レベルを把握し、適切なサポート・必要な教育を明確にします。システム導入前に、自社の従業員の実力を調べておくことは開発にも役立ちますし、IT化の方針を立てるにも参考になります。5段階評価のアンケートよりも、簡易なテスト形式にするほうがより明確になるでしょう。この時に、管理職・一般社員という分け方や、設計部・工務部といった分け方をして、それぞれの従業員にあった情報収集を行います。なんでもかんでも集めようとすると、かえって情報の精度が下がってしまいますので注意してください。また、システム導入後にも定期的に利用できるような調査項目・テスト内容にしておくと、成熟度の変化が確認できます。できれば、1年に一度は社員IT成熟度を把握しておくことをお勧めします。定期的にすることで、社員にITの必要性を喚起できるというメリットもあります。

 成熟度が把握できたら、どこまでを個々の従業員の実力とし、どこからがサポート対象とするのかの基準を設定しましょう。すべてを従業員に任せてしまうのは、一見すると楽ですが、絶対にうまくいきません。従業員の役割に見合った技術を習得してもらうためには、教育内容を決め、役割を超えたと判断される内容(システムトラブル、非定型処理等)をサポート対象にする区分けが必要です。この区分けがきちんとできていないと、責任のなすりあいという不毛の事態に陥ります。

 最後に、教育内容(従業員が習得すべきこと)、サポート内容(従業員が習得しなくてもいいこと)、IT成熟度(従業員の現状の習得度)を基準にして、教育体制と運用体制を計画します。専任を配置できることが理想ですが、現実は無理な場合が多いです。外部の教育機関やサポート機関の利用も念頭におきましょう。また、OJTや職場単位での自主勉強会や委員会活動など、従業員内での教育運用体制も有効です。ただし、従業員の自主性に任せるのではなく、会社として積極的に仕組みづくりに関与し、勉強会講師や委員会活動のサポートリーダーへは謝礼や評価UPなどの恩恵を与える、会社公認であるという雰囲気作りを行うなどが必要です。勤務時間内で活動を許可するだけでもずいぶん効果があります。

 教育や運用は後ろ向きな業務と敬遠されがちですが、企業の根幹を支える重要なものです。役割を担う人たちに適切な立場・地位を与えて評価する仕組みがないと、会社全体の能力向上は望めません。ITに限らず、自社の教育運用体制はどうなっているか、一度チェックしてみてください。