PDFの紹介をした際に、紙データ電子化の話に触れました。 今回は、もう少し掘り下げてお話したいと思います。
前回を振り返ると、次のものを紙データとして挙げました。
電子納品での紙データ
・公印のある証明書類
・計測器等の記録紙
電子納品以外での紙データ
・社内マニュアル
・業務ソフトの印刷結果
・カタログ
・手書きの打合せ記録
これ以外にも、
・納品書、請求書、領収書等の会計資料
・見積書、見積用図面
・現場の新規入場者受入アンケート
・安全日誌
等さまざまなものがあり、挙げればきりがありません。これらを電子化するのに、以前お話したスキャナーで取り込むだけでいいのでしょうか。
実は、ここに今年の4月から施行される「e?文書法」が関係してくるのです。
e?文書法は、紙書類の電子化を法的に認めるというものです。施行が迫ってきたにもかかわらず、具体的な仕様が今ひとつ見えてきませんが、「文書の電磁的保存等に関する検討委員会」の中間報告書では、次のような基準が目安とされています。
1.見読性
保存されている文書を表示・印刷できること
256階調・150dpi(カラー)または200dpi(モノクロ)以上
2.完全性
保存義務期間中に文書が消えたり、破損しない。文書が改変・消
去されない。文書が改変されたことを確認できる。
3.機密性
アクセス制御ができる。
4.検索性
必要な程度で検索できる。
1・見読性は、今のスキャナーで何の問題もありません。
2・完全性は、電子署名を付したり、時刻を保証する措置(タイムスタンプ等)を行えば解決します。
3・機密性は、電子化書類のパスワード設定や、管理フォルダのアクセス管理を行うことで対応可能。
4・検索性は、スキャナーデータをOCR(略語参照)にかけて透明文字をつけることによりできそうです。
当初は保存場所をなくす程度の目的であった紙文書の電子化が、法的書類としても利用できるようになるのです。 具体的に説明しましょう。現在の電子申告(納税手続きの電子化)は、基本書類はインターネット上で作成・送信できますが、添付書類は紙で郵送する必要がありました。そのため、手間が多く電子申告のメリットが失われていたのです。
e?文書法適用後は、これら紙書類も電子化して添付可能になるはずなので、メリットがでてきそうです。 もちろん、上に挙げた4点を満たすには、きちんとしたシステム構築が必要です。それでも、書類の完全電子化に向けてまた一歩前進したように思います。
ここで、「電子文書」と「電子化文書」の違いを確認しておきましょう。
「電子文書」は、作成時から電子的に作られた文書のことで、ワープロや表計算等のソフトで作られたものです。いっぽう、「電子化文書」とは、あらかじめ紙で作成してあるものを、スキャナー等で読み取って電子化した文書をいいます。将来的には電子文書が増えてくるでしょうが、しばらくは電子化文書との併用で対応していくことになるでしょう。
具体的なシステム構築ですが、PFUの「ScanSnap」(「PDF その2」で紹介)に、「読んでココ!」という最新版のOCRソフトが対応しました。これで前述した1・見読性と4・検索性は解決することになります。
さらに、この対応は全文検索(「前文検索ソフト」リンク集で説明)にも有効です。スキャナーデータは、画面上では文字に見えますがコンピュータは絵(点の集まり)としか認識しません。よって、従来の検索機能は使えませんでした。いっぽう、OCRソフトはスキャナデータを文字化しますので、全文検索で電子化文書検索が可能となります。
3・検索性は、PDFの基本機能+Windowsサーバーの基本機能で対応可能です。
あとの問題は、2・完全性の電子署名とタイムスタンプですね。これはまた、別の機会に詳しく説明しますが、各種サービスがインタネット上で提供されています。インターネット環境を整備しておくことが大切になります。
e?文書法については、4月以降に運用開始されてから詳細をお知らせしようと思います。もうしばらくお待ちください。